◇ 宗教活動が破綻の原因と認められたケース

宗教活動が破綻原因とされ、離婚請求が認められた事案①

妻が婚姻後「エホバの証人」に入信し、集会の参加、伝道活動等熱心な宗教活動を行い、他方、わが国の習俗である仏式の葬儀や法事、節句などの行事に参加することを拒み、子どもにも「エホバの証人」の教義を教え行事に参加させたため、このような妻の行動に強い不満を感じた夫が妻に信仰をやめるよう説得したが、妻は全く聞き入れず、次第に夫婦関係もなくなり、食事を共にすることもなくなって、夫婦関係破綻に至った事案。

第一審判断の要旨(名古屋地判昭和63年4月18日判タ682-212)

X:夫(原告)   Y:妻(被告)
・昭和52年3月   結婚
・昭和53年6月   長男出生
・昭和58年7月   二男出生

国民はすべて信教の自由を有し、このことは夫婦間においても同様であるが、夫婦として共同生活を営む以上、その協力扶助義務との関係から、宗教的行為に一定の限度があるのは当然のことと考えられる。
Yの宗教活動により、明確にYの家事行為に支障が生じていることが認められないとしても、きわめて多くの時間を集会への出席、伝道活動に費やしており、通常の信教の自由の範囲を超えているというべきであり、次に、子どもの養育は父母が共同して行うべきところ、Xの意思に反して、まだ幼く判断能力の十分でない子どもらに「エホバの証人」の教義を教えることを正しいと信じてこれを実行したことは不適切であり、さらに、鯉のぼりをあげるなどの習俗や仏式による葬儀、法事等の崇拝行為、服装も社会交際上の慣例の範囲であり、本質的に信教の自由の保障に反するとまではいうことはできない。したがって、Yの行為は、婚姻関係における扶助協力義務の限度を超えて宗教的行為をなしている。
この様なYの宗教活動により、Yと離婚することを決意するに至ったことはやむを得ない事で、かかる対立から夫婦関係がなくなり、Xも家でほとんど食事をしない等の状態が続いていることからすると、X・Y間の婚姻関係が破綻していると認めることが相当である。

 

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