◇ 夫に刑事告訴された妻からの離婚請求

妻を刑事告訴した夫に対する妻からの離婚請求が認められた事案

無断で離婚届を提出した妻を刑事告訴した夫に対する妻からの離婚請求について、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして認容した。

控訴審判断の要旨(東京高判平成4年11月26日家月46巻1-147)

X:妻(原告・被控訴人)  Y:夫(被告・控訴人)
・昭和54年6月  婚姻
・昭和56年6月  長男出生
・昭和60年12月  二男出生
・昭和62年2月  X、Yに無断で離婚届を提出
Y離婚無効確認等請求訴訟を提起(Y勝訴)
・平成2年     X、Yに対し慰謝料を支払う
Y、検察庁に有印私文書偽造・同行使罪でXを告訴するが、不起訴処分
Y、検察審査会に審査申立て、さらに保護責任者遺棄罪で検察庁に告訴するが不起訴処分
・平成3年4月   X、離婚訴訟を提起

Yがくも膜下出血により倒れるまでは、YとXとの間の夫婦関係はほぼ正常であり、その間には特段取り上げるほどの問題はなかったと考えられる。Yが一命を取りとめてリハビリテーションを行っているのであるから、Xとしてはこれに協力するのが夫婦としての愛情であり、その治療中に無断で離婚届を出して別居したXの行為はこれを正当化することはできない。
この点に鑑みるとXが破綻の当初の原因を作ったということができる。しかし、離婚無効の判決が確定し、慰謝料も支払われているのに、告訴をすることは妻との間で婚姻関係を正常化しようとするものとしては著しく妥当を欠くものであり、このようなYの一連の行為が最終的に両者の愛情を断ち切ったという面も否定できない。
こうしてみると、婚姻関係が破綻するに至った原因がXのみにあるということはできず、その責任は双方にあるというのが相当である。そうすると、婚姻関係が破綻した原因は双方にあるから、Xの離婚請求は理由があるといわざるをえないとして、Yの控訴を棄却した。

 

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