◇ 養育費や慰謝料の未払い・支払い停止

● 対応の方法
離婚をした後、離婚時に決められた、養育費や慰謝料を支払わない、支払いが滞っているというトラブルは、頻繁に発生しています。養育費などは、離婚後長期間に渡って支払いが続くため、支払い義務者の経済状況や生活状況、心情面での変化が起こる可能性が十分にあります。
支払い義務者が、支払い能力があるのに約束を履行しない場合には、まず直接相手に連絡をして催告したり、内容証明郵便で支払いを促す方法をとってみます。相手方に全く対応する姿勢が見られなければ、法的な手段をとることができるかを検討していきます。
この場合、離婚の際の約束(慰謝料や養育費の支払いについての合意)がどういう形でされているかによってできることが変わってきます。

① 両者の合意が調停調書に記載されている場合
裁判所から相手方に対して、慰謝料や養育費を支払うように勧告や命令をしてもらえる「履行勧告」や「履行命令」の申立、財産の差し押さえをすることが可能です。履行命令に従わない場合は、10万円以下の過料の制裁があります(履行勧告に制裁措置はありません)。

② 公正証書(執行認諾文言あり)の場合
執行認諾文言が記載されている公正証書を作成していれば、強制的に相手の財産を差し押さえることが可能です。差し押さえの対象となるのは、給料、預貯金、不動産、家財その他相手名義の資産になりますが、特に実効性が高いのは給料や預貯金です。給料を差し押さえると、原則、月給の最大1/2までが、会社から直接支払われます。
ただし、給料や預金の差し押さえについては、相手の会社名・会社の所在地・本社の所在地、銀行名・支店名などを把握している必要があります。
執行認諾文言のない公正証書には法的な強制執行力はありません。

③ 両者の合意が、念書や合意書の場合
調停証書や執行認諾文言付公正証書ではない場合、または、書類作成をしていない場合には、地方裁判所(請求金額が140万円を超える場合)か簡易裁判所(請求金額140万円以下)に訴訟を提起することになります。

● 相手方の財産調査(支払い能力調査)はどうやってするのか
相手方がどこの会社に勤めているかや、どの銀行に預金があるのかが分からない場合、調停証書があれば、財産開示手続きの制度を利用できます。これは地方裁判所に申立を行い、相手の財産状況(資産・収入など)を開示させる手続きです。
公正証書や合意書などの場合は、自力で調査するしかありません。調査会社などを利用するのも一つの方法です。

● 差し押さえの範囲は
請求は、慰謝料等に関しては支払いが滞納している金額が限度になります。ただし、「義務違反があった場合には、残額も一括で支払いをする」というような「期限の利益喪失約款」がある場合は、残額の全てを請求できます。養育費については、一度の強制執行手続きで、最終の支払い分までの養育費について差押えが可能です。

 

◇ 養育費の増額・減額

子どもの成長や、進学その他個人的・社会的事情の変化によって離婚時に取り決めをした養育費では不足してしまう事態が発生する場合もあります。やむを得ない事情がある場合については、変更が認められる場合があります。無論、養育費を支払う相手方の経済的事情にもよりますので、必ず認められる訳ではありません。
当事者同士の話し合いで合意できれば問題ありませんが、相手方が申し入れに応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。調停では調停委員(場合によっては家庭裁判所調査官)が双方の意見を聞き調整を行います。調停で合意できなかった場合は、審判に移行し裁判所が新しい養育費の金額を決定します。

● 金額の変更について考慮される事情

<増額>   ・子どもの入学・進学に伴う費用の必要
・子どもの病気やケガの治療による治療費の必要
・養育費を受け取る側(親)の病気やケガ
・養育費を受け取る側(親)の転職や失業による収入の低下
・物価水準の大幅な上昇

<減額>   ・支払う側の病気
・支払う側の転職、失業による収入の低下
・受け取る側の収入贈

 

◇ 子どもとの面会のトラブル

面会交流のトラブルも非常に多く見られます。一緒に暮らしていない親が、子どもに会わせてもらえないという様な場合、当事者どうしで話し合ってもまとまらなければ、家庭裁判所に面接交渉を求める調停を申し立てる方法があります。離婚調停を経て離婚していて、調停調書の中に面接交渉についての記載があれば、もしそれが守られていないのであれば、家庭裁判所に履行勧告の申立もできます。履行勧告の申立をすると、裁判所は元妻に事情を聴くなどして調査を行い、会わせない事が不当であると判断すれば元妻に履行勧告書を送るなどして、面接交渉を促します。しかしこれらは、子どもの福祉を最優先に考えて行うべきものですから、裁判所がいろいろな事情を勘案して、面接交渉を行わない方がよいと判断する場合もあります。

 

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