◇ 信仰の不一致を理由とする離婚請求
信仰の不一致による対立が離婚原因であると認められた事案
創価学会会員の男性が、その信仰を隠して熱心なキリスト教徒と婚姻したところ、双方の信仰の相違に端を発する問題から対立に至り、夫婦双方から離婚およびこれに伴う慰謝料請求がなされた事案において、離婚請求を認めた上で、夫婦いずれの側に婚姻関係破綻の主たる責任があるとは言い難いとしながらも、妻の夫に対する慰謝料請求を認容した事案。
控訴審判断の要旨(東京高判昭和58年9月20日判時1088-78)
・昭和55年3月頃 見合い
・ 6月頃 結婚
・昭和56年2月 別居
妻の宗教心は極めて強く、キリスト教以外の特定の宗教の信者とは結婚する意志を有していなかったが、夫は、妻と知り合う以前から創価学会の会員であったにもかかわらず、これを打ち明ければ妻との結婚が不可能となることを恐れ、妻との交際およびこれに続く婚約の期間を通して意図的に特定の宗教を信仰していない風を装った。
夫は妻に対し、結婚前に自らの信仰を率直に打ち明け、互いの信仰について理解を深めるように努めるべきであったにもかかわらず、これを怠り、結果として妻を継続が極めて困難な婚姻関係に引き入れ、継続困難な破綻状態に陥れる結果となったこと、妻は資格を取ってキリスト教系の幼稚園で保母として働き自立していたが、結婚に際し職を離れ、夫との婚姻生活に入ったこと、妻は別居後は再び自立を余儀なくされ、結婚前とは異なる幼稚園で働いているが、月額給与は7万円程度であるところ、夫は、勤務先会社の経理部長の職に就いており、年収1000万円程度の収入があること、本件離婚自体によって、妻の被る有形無形の打撃を併せれば、慰謝料は100万円が相当である。