◇ アルツハイマー病が原因となった離婚請求が認められた事案
アルツハイマー病が原因となった離婚請求が認められた事案
アルツハイマー病に罹患して、寝たきりで会話もできない状態となり、禁治産宣告を受けた妻に対する夫からの離婚請求について、病気の性質等に照らせば、強度の精神病(民法770条1項4号)に該当するか否か疑問が残るとして、同号に基づく離婚請求については認容しなかったものの、婚姻関係の破綻を認め民法770条1項5号(婚姻を継続し難い重大な事由)に基づく離婚請求を認容した。
第一審判断の要旨[長野地判平成2年9月17日家月43巻6号34頁]
夫(原告)・妻(被告)間の婚姻関係は、妻がアルツハイマー病に(同時にパーキンソン病にも)罹患し、長期間にわたり夫婦間の協力義務を全く果たせないでいることなどによって破綻していることが明らかであり、夫が離婚後も妻への若干の経済的援助および面会などを予定していること、妻の両親はすでに他界し、親族の異父兄とはほとんど交流がないこと、妻は現在老人ホームに入所しているところ、離婚後の老人ホーム費用は全額公費負担になる予定であることを併せて考慮すれば、夫の民法770条1項5号に基づく離婚請求はこれを認容するのが相当である。なお、妻の罹患している病気の性質、及び妻に対する精神鑑定が禁治産宣告申立事件のためにさなれたものであることなどの理由により、本件の場合が民法770条1項4号に該当するか否かについては疑問が残るので、同号による離婚請求は認容し難い。