◇ 性的不能を隠して婚姻したケースでの離婚請求
婚姻時に自己の性交不能を妻に告知せず、婚姻後も性交渉がない場合婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとし、妻からの離婚請求が認められた事案
夫が、婚姻に際して自己が性的に不能であることを秘し、その後も性交不能が治癒せず、同居期間中一度も性交渉がなかったという事実は、婚姻を継続し難い重大な事由があるときに該当するとして、離婚および慰謝料の請求200万円を認めた事案
第一審判断の要旨(京都地判昭和62年5月12日判時1259-92)
X:妻(原告) Y:夫(被告)
・昭和55年10月 見合い
・昭和56年11月 同居
・ 12月 結婚
・昭和60年6月 別居
離婚原因該当性について、婚姻が、男女の精神的、肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意のあるような特段の事情のないかぎり、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として婚姻を継続し難い重大な事由に当たるというべきである。
慰謝料について、一般的には、事実の単なる消極的不告知が不法行為となることはないというべきであるが、告知されなかった結婚の条件が、婚姻の決意を左右すべき重要な事実であり、その事実を告知することによって婚姻できなくなるであろうことが予想される場合には、その不告知は、信義則上違法の評価を受け、不法行為責任を肯定すべき場合がありうると解するのが相当である。
婚姻生活における性関係の重要性、さらには、性交不能は子どもをもうけることができないという重要な結果に直結することに照らすと、婚姻に際して相手方に対し自己が性的不能であることを告知しないということは、信義則に照らし違法であり、不法行為を構成すると解するのが相当である。