◇ 有責配偶者からの悪意の遺棄
有責配偶者からの悪意の遺棄を理由とした離婚請求を棄却した事案
別居後の生活扶助をしない夫に対する妻からの離婚請求について、妻は有責配偶者であり、別居期間中の夫に対する生活扶助請求権は否定され てもやむをえないので、夫が生活扶助をしないことは悪意の遺棄に当たらないとして、離婚請求を棄却した。
第一審判断の要旨[水戸地判昭和43年7月31判タ227-219]
別居については原告(妻)が東京での再就職の途を選ぼうとして、自ら進んで被告(夫)との同居生活を棄てたものと認めるのが相当であるか ら、被告(夫)に対して同居協力義務違背の責任を問うことはできないというべきであるし、夫婦間の紛争を公然化し破局を決定的ならしめた点においても原告(妻)の側に大きな責任がみとめられなければならないから、かかる有責配偶者の別居期間中の生活扶助請求権は否定されてもやむをえない。
したがって、被告(夫)が原告(妻)をして実家において生活庇護をうけさせたまま、その生活を顧みなかったからといって、被告(夫)の所為をもって離婚原因として悪意の遺棄に当たるものと認めることはで きない。