◇ ほとんど帰宅しない夫に対する離婚請求
仕事を理由にほとんど帰宅しない夫に対する離婚請求が認められた事案
仕事を理由にほとんど帰宅しない夫に対する妻からの離婚請求について、仕事のためとはいえ、あまりに多い出張・外泊等の妻ら家族を顧みない行動は、同居協力扶助の義務を十分に尽くしていないといえ、民法770条1項2号の「悪意の遺棄」の離婚請求までは容認できないが、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして民法770条1項5号に基づく離婚請求を認容した。
第一審判断の要旨[大阪地裁 昭和43年6月27日判時553-56]
原告(妻)・被告(夫)の婚姻生活は、昭和38年頃から徐々に物心両面で夫婦共同生活体としての実を失って空洞化し、ついに昭和40年8月頃に至って回復しえないまでに破綻してしまったものであり、原告(妻)の離婚意思はこのような関係の下に生じたものとみるのが相当である。しかしてそのここに至ったについては、前示のとおり、原告(妻)の経済力が漸次増大していったことが、全く無関係とはいえないにしても、主としては被告(夫)がたとい仕事のためとはいえ、あまり多い出張、外泊等原告(妻)に対する夫としての同居協力扶助の義務を十分に尽くさなかったことにあると断じて妨げない。そうである以上、被告(夫)の前示所為をもっていま直ちに原告(妻)に対する「悪意の遺棄」に当たるとするにはやや足りないけれども、なお原告・被告間には「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとするに十分であり、その責任の過半が原告(夫)にあることもまた明らかである。