◇ 別居1年で離婚原因として認められた事案
別居期間が1年余でも婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚請求が認められた事案
第一審判決が、婚姻関係は修復可能であるとして、婚姻を継続し難い重大な事由は存在しないと判示したのに対し、控訴審判決は、妻が夫の先妻の位牌や、夫のアルバムを勝手に処分したことが、夫にとって人生でも大きな屈辱的な出来事であり、その心情を深く傷つけるものであって、妻に対する信頼関係は失われ、もはや婚姻関係は修復不可能であるとして、離婚請求を認容した。
X:夫(原告・控訴人 昭和2年生) Y:妻(被告・被控訴人 昭和25年生)
・平成2年 婚姻
・平成19年 Y、Xのアルバムを無断で焼却
・平成20年 Y、Xの先妻の位牌を無断で親族に送りつける Y、家を出て、以後別居
控訴審判断の要旨(大阪高判平成21年5月26日家月62巻4-85)
齢80歳に達したXが病気がちとなり、かつてのような生活力を失って、生活費を減じたのと時期を合わせるごとく始まったXを軽んじる行為、長年仏壇に祀っていた先妻の位牌を取り除いて親戚に送りつけ、Xの青春時代からのかけがえのない思い出の品を償却処分するなどという自制の薄れた行為は、あまりにもXの人生に対する配慮を欠いた行為であって、これら一連の行動が、Xの人生でも大きな屈辱的出来事として、その心情を深く傷つけるものであったこと、Yはいまなお、これらの斟酌のない専断について、自己の正当な所以を縷々述べては
ばからないが、その理由とするところはとうてい常識にかなわぬ一方的な強弁にすぎず、Xが受けた精神的打撃を理解しようという姿勢に欠けることなどに鑑みると、XとYとの婚姻関係はXが婚姻関係を継続していくための基盤であるYに対する信頼関係を回復できない程度に失わしめ、修復困難な状態に至っているので、別居期間が1年余であることなどを考慮しても、XとYとの間には婚姻を継続し難い重大な事由があり、離婚請求には理由がある。