◇ 借金を理由とした離婚請求
夫の多額な借金等を理由にした離婚請求が棄却された事案
夫が多額の借金を抱え、これに不満をもつ妻が離婚を求めたが、借金の理由なども考慮して、離婚請求が棄却された。
X:妻(原告) Y:夫(被告)
・昭和50年12月 挙式(結婚当初Yの借金総額600万円)
・昭和51年5月 婚姻届提出
・昭和51年10月 長男出生
・昭和53年2月 二男出生
・昭和57年10月 Y、Y母に保証人となってもらい、200万円を金融機関から借入
・昭和58年9月 X、取り立ての電話や電報により、Yがサラ金から借金をしていることを知る
・昭和59年1月 Y、サラ金への支払いのため、1ヶ月分の生活費として3万円しか渡せなくなる
・昭和59年2月 X、離婚したい旨を告げ、子らを連れて実家へ帰る
・昭和59年3月 X、離婚調停申立て
・昭和59年4月 Y、自宅土地建物を担保としてサラ金から800万円を借りて他の債務を返済し、債務を一本化
・昭和59年5月 X、離婚訴訟を提起
第一審判断の要旨(仙台地判昭和60年12月19日判タ595-77)
XとYの関係は、借金の問題以外には婚姻生活を継続していくうえで、特に支障となるような事情はまったく認められないこと、また、借金の問題にしても、確かにY一人の収入で月々10万円を超える借金の返済をしていくことはかなり困難と考えられるものの、Xも編物関係の仕事をするなり、あるいはパートタイマーとして勤務するなりして、いわゆる共働きをし、その収入を家計に入れるようにしさえすれば借金の返済も生計の維持も楽になるものと考えられること(夫が困っているときに妻が助け、夫の収入少なければその不足分を補うため妻も働いて収入を得るというようなことは広く世間一般の夫婦の間では当然のこととして行われているものであり、それは公知の事実である)、またその借金自体もそれが生じた原因はY弟の大学進学やXとYとの結婚等であったというのであるから、Yにとってはやむをえなかったとも言え、その点につきYを責めることはできないこと、以上の諸点を総合考慮してみると、本件においては民法770条1項5号の婚姻を継続し難い重大な事由があるとはとうてい認められないものである。