◇ 植物状態にある妻に対する離婚請求

植物状態にある妻に対する夫からの離婚請求が認められた事案

妻が植物状態になり回復の見込みはないところ、夫は、長年、妻の治療や見舞いなどの誠意を尽くし、将来の治療費についても社会保障制度により相当程度の見込みを確保し、離婚後の妻の生活、療養監護についても後見監督人である妻の母と合意ができている状況においては、離婚が妻のみに特段の不利益を課すといった事情もないことから、夫と妻の婚姻関係は破綻しているとして、夫からの離婚請求を認容した。

第一審判断の要旨(横浜地横須賀支判平成5年12月21日判タ842-193)

X:夫(後見人・原告)  Y:妻(被後見人)  A:妻の母(後見監督人・被告)
・昭和51年2月    婚姻
・昭和52年10月    長男出生
・昭和54年6月    二男出生
・昭和56年頃      Y脳腫瘍を発病
・昭和63年頃      Y脳腫瘍が再発
・平成2年頃      Y植物状態になる
・平成5年2月      Y禁治産宣告を受け、Xが後見人に選任
・     4月      Yの母が後見監督人に選任

Yは、失外套症候群のため植物状態にあり、回復の見込みはない。Xは長年、Yのために治療や見舞いなどに誠意を尽くし、治療費の精算も終えてYに不利となる問題はなく、将来の治療費の負担についても社会保障制度により相当程度の見込みを確保している。Yが植物状態となってから約4年間を経過したことなど婚姻関係の実体を取り戻す見込みはなく、Yの離婚後の生活、療養監護については後見監督人であるAとの間で合意に至り、Aを苛酷な状態に置かない配慮を示している。また、子どもたちの養育などについて年齢、意向などの諸点からみても不都合な所はなく、Yのみに特段の不利益を課するといった事情もない。
してみれば、XとYとの婚姻関係は破綻したものというべく、その原因は民770条1項5号(同項4号の趣旨をも斟酌して)に該当すると解されるから、Xの本訴離婚請求には理由がある。

 

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