◇ 夫婦らしい生活の実態がない

夫婦らしい生活の実態がないこと等を理由とした離婚請求が認められた事案

妻からの離婚請求に対し、双方の精神的不調和、性格の不適合をきたし婚姻が破綻したとして、夫から出された有責配偶者の離婚請求拒否の抗弁を排斥して、請求を容認した。

第一審判断の要旨(横浜地判昭和59年7月30日判時1141-114、判タ541-230)

X:妻(原告)   Y:夫(被告)
X・Yの婚姻関係は、6年数ヶ月にわたる別居、Xの強い離婚意思により、すでにその実態を失い、破綻して回復し難い状況にあるとみるべきである。X・Yの婚姻生活は昭和52年1月頃までは格別の問題もなく推移していたのが、同年2月頃から不自然な状態になったのであり、これについては各人の行動に取りたてて非難されるべきものが原因としてあったわけではなく、つまるところX・Y間の精神的不協和がその重要な原因をなしているものと認められるのである。認定の事実によれば、それは、XのYに対する絶望感ないし愛情喪失にあ ること。さらにその由来するところは、夫婦ないし結婚生活に対する双方の考え方の懸隔(性格の不適合)というべきものであり、これを克服して感情の交流をはかりうる相互理解がついに得られなかったこと,Xの活発な気性に対して、Yのそれはまじめではあるが、やや柔軟さを欠き、感受性の強いXに対して度量のある対応をとりえなかったこと、Y指摘のXの各行動はYに対する加害者意思に基づくものではなく、むしろYに対する感情に根ざした逃避的 意思に基づくものであったことが認められるのである。
このようにみてくると、婚姻破綻の責任がもっぱらあるいは主としてXにあるとするのは相当ではなく、XをしてY指摘の行動をとらせるに至ったYの生活観ないし生活態度もその重要な要因として考慮しなければならない。
したがってXが有責配偶者であるとするYの主張は失当であって、これを採用することができない。

 

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