◇ 統合失調症が原因となった離婚請求
統合失調症(精神分裂病)が原因となった離婚請求が棄却された事案①
統合失調症(精神分裂病)に罹患した妻に対する夫からの離婚請求について、民法770条1項4号の離婚原因の存在を肯定したものの、妻の病気の再発には夫にかなりの原因があること、具体的方策も十分講じられていないなどを理由に婚姻を継続させるのが相当であるとして、民法770条2項を適用し、離婚請求を棄却した。
第一審判断の要旨(東京地判昭和54年10月26日家月32巻5号64頁)
妻(被告)は「強度の精神病」に罹患しており、「回復の見込みがない」ものと認められ、夫(原告)の請求は、民法770条1項4号に該当するものであ る。しかしながら、婚姻後夫は本来家事処理の得意でない妻に対し自身の妻としての理想像を求め、妻の非を責めるにのみ急で、夫として妻をいたわり包摂する寛大さに欠け、育児と家事に披露している妻に対しいたずらに厳しく
接しすぎたことが前記病気(統合失調症)の再発にかなりな程度関与しているものと認められること、夫は妻の療養・治療については昭和50年以前はもっぱら妻の実家にまかせきりにし、妻の治療に腐心するというよりは、むしろ性急に妻との離婚を求める態度が認められること、夫が妻の扶養につき相応の援助をするだけの余裕が十分あるものと認められるのに対し、妻の父は高齢で経済的に余裕もなく、長期間妻を扶養するについては、かなりの不安が認められるみもかかわらず、夫は本訴において妻の扶養につき応分の負担をすることすら拒否している事情の下においては、夫が妻と離婚をするとしても、妻の将来につき具体的方途は必ずしも十分講じられていないものと言わざるをえず、叙上諸般の事情を総合勘案すると、夫と妻との婚姻を継続させるのが相当であると認められるから、民法770条2項を適用して夫の本訴離婚の請求を棄却することにする。