◇ 悪意の遺棄が認められなかった事案

同居するよう仕向けた行為を理由とした離婚請求が認められた事案

子どもを連れて家でして別居した妻に対する夫からの離婚請求、および妻からの反訴離婚請求について、夫からの「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)の主張を退け、むしろ夫に婚姻破綻の原因があり、妻が夫との同居を断念して別居したことはやむをえないとして、妻からの民法770条1項2号に基づく離婚請求を認容した。

第一審判断の要旨[浦和地判昭和59年9月19日判時1140-117、判タ545-263]

夫・妻とも民法770条1項2号に基づく離婚請求をしているので、この点について判断するに、前項で認定した事実によれば、夫・妻の婚姻関係は、基本的には妻の人格を無視した夫の生活感情と言動によって破綻の道をたどったと認められるのであって、妻が夫との同居を断念して別居したことはやむをえざるものであったというべきであり、しかも、夫はやむなく別居した妻および子どもたちに対して、昭和56年8月以降生活費を全く支払わないのであるから、悪意の遺棄を原因とする夫の離婚請求は理由は ないが、同様の原因に基づく妻の反訴請求は正当というべきである。

 

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