◇ 夫以外の男性の子を産んだことを理由とした離婚請求
他の男性の子を産んだことを理由とした離婚請求が棄却された事案
妻の不貞行為を理由にした夫からの離婚請求に対し、妻の不貞行為により長男を出生したことを認め、婚姻関係の破綻の修復はきわめて難しいとしながら、婚姻関係の破綻につき有責配偶者である夫の請求を認めて離婚請求を許す事は、夫婦関係を支配する倫理観念に背くものであるとして請求が棄却された事案
控訴審判断の要旨[東京高裁昭和40年8月16日判決]
原告(夫)が被告(妻)と別居して以来、多年他の女性と同棲を続けていることや、原告(夫)と長男との間に父子関係がない点などを考えると、原告(夫)と被告(妻)との破綻の復元はきわめて難しいことであると考えられるけれども、婚姻生活の復元が可能であるかということと夫婦の一方の離婚請求を裁判所が認容すべきかということとは別のことである。くだいて言えば、婚姻生活の復元がきわめて困難であるにかかわらず、人類の倫理観念などに照らして、夫婦の一方の離婚請求を認容することは裁判所としてとうていできない、という場合があるのである。
本件において、婚姻関係の破綻につき被告(妻)に比してより大きな責任を負うべき立場にある原告(夫)の請求をいれて本件離婚請求を許す事は、夫婦関係を支配する倫理観念に背くものであって、当裁判所としてとうてい是認し難いところである。