◇ 財産分与への備え

妻側からの財産分与の要求に対して、それが正当な請求の範囲を超えるような物であった場合には、しっかりとした理論武装を行った上で対応していく必要があります。妻側には離婚後の生活についての経済的な不安がある場合が多く、またそれまでの夫婦の関係によっては、感情的な部分での請求(慰謝料的請求)を行ってくる場合もあります。これらに対する理論武装として、財産分与の対象に何がなるのかと言った基本的な知識と、夫婦間の共有財産の正確な把握が必要になってきます。

◇ 財産・収支の把握

家の財産や家計の収支をあなたはしっかりと把握しているでしょうか?給料などが振り込まれた後は、自分はお小遣いをもらってあとは妻任せ・・・貯金がいくらあるのかもよく知らない・・・

もしこのような状況であれば非常に危険な状況と言っていいでしょう。財産分与は婚姻後に夫婦が協力して形成した財産が対象となります。妻が専業主婦であった場合でも夫が外で仕事をすることを、育児や家事など家庭を守ることで支えたという考え方に立つため、財産分与の請求は当然認められます。 (専業主婦の場合、一般的に共有財産の3~5割程度)

では、実際に夫婦が協力して築いた財産はどうやって計算するのでしょうか?
これはお互いに把握している物しか、検討の対象とならないことは明白です。あなたが知らない、奥さんの個人名義の口座にあるお金・財産は分与の計算に入れようがありません。もし奥さんが離婚を考えているならば、家計の中から準備を進めている可能性も十分あります。
これらをあなたが把握できなければ、必要以上の財産を分与しなければならなくなり、最悪の場合は、あなただけが負債などを背負わされ、裸同然で離婚・・・こんなことになりかねません。

実際の対処としては、まず家計の管理をしっかり行うということです。月々の家計収支をチェックすることで、不自然なお金の動きを把握でき、また妻も勝手な動きを取りにくくなります。さらに、預貯金については家族全員の口座について、金融機関・口座番号・預金残高・満期などを把握しておきましょう。特にお子さんの口座を使って、妻が隠し財産を貯めているケースが多く見られるので注意が必要です。生命保険についても、加入状況の把握が必要です(契約者・受取人・解約払戻金・保険料など)。保険の場合も子どもの学資保険などを利用して、妻の秘密の財産形成に充てている場合があります。
不動産に関しては、一度登記簿を取寄せて名義の確認を行っておきましょう。レアケースではありますが、知らないうちに名義が書き換えられていたり、担保が設定されている可能性がないとはいえません。
その他、財産分与の対象となる共有財産として車や株式などの有価証券、貴金属・宝飾品など換金性のある動産などがありますが、あらかじめどの程度の資産価値があるのかを調べておくとよいでしょう。

これらのチェック・調査を今まで全く関心を示さなかった夫がいきなり始めれば、妻は当然不審に思い、警戒をします。何かの理由を付けるなどできるだけ自然に、若しくは妻に内密に調査を行う必要があります。

◇ 債務の負担について

夫婦財産制度では、家族の日常生活の維持等に必要な費用に係る債務については夫婦が連帯して責任を負うことになっています。しかし、家庭の経済レベルに合わない高価な買い物や浪費、ギャンブルなどの借金などについては、原則として連帯責任を負う必要がありません。例えば妻が高価なブランド品を夫の同意もなく勝手に買ったり、通販などで生活に必要のないと思われるものを次々に購入したり、高級エステに通ったりといったような場合には、夫に債務の返済の義務はありません。逆に、夫がギャンブルなどの為に消費者金融から借り入れをしたと言うような場合にも、妻には債務を返済する義務はありません。

注意が必要なのは、買い物をする際にクレジットカードを利用するケースが多いことです。夫の名義のカードを使って妻が買い物をするようなケースは日常的によく行われています。しかし、このような場合においても、日常的な生活等に必要な範囲を超えてで夫がカードの使用を認めているような場合を除いて(つまり妻が勝手に夫のカードを使った場合)は、原則として夫はその債務の責任を負う必要はありません。しかし、クレジットカードが夫婦共有名義の場合は、カードを使用するたびに、お互いが連帯保証をしていると同じことになり、債務の支払い義務が生じますので注意が必要です。

◇ 別居中に築いた財産はどうなる?

財産分与は、婚姻期間中に形成された財産で、離婚時に残っている財産について、妻がどれだけ貢献をしてきたかを基準として考えられます。妻が婚姻生活の場としていた家を出てしまった場合には、それ以降に形成された財産については、妻が夫に協力して財産形成に係ったとは言えない為、財産分与の計算をする際に評価が低くなります。

◇ 個人経営の会社の資産は?

夫が会社を経営している場合、会社の財産は会社のものであり、夫の財産ではないので、原則として財産分与の対象にはなりません。しかし、実質的に家族が会社経営を手伝っていると言うような個人経営の会社の場合には対象とされる場合があります。
また、農家や個人商店のように夫婦が夫の両親と共同でその仕事に携わっているような場合には、全体の財産のうち、夫婦共有の財産部分を算出してそこから財産分与をすることになります。

 

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