◇ 離婚に応じる場合の交渉(法的原因が無いケース)

妻からの離婚請求に応じる場合には、できるだけ妥当な線で財産分与等の離婚条件をまとめて協議離婚をすることが目標です。(お互いに法的な離婚原因がない場合)非現実的な要求をされた場合には、きちんと事情を説明し、要望に応えることは不可能であることを理解してもらう必要があります。それには数字の裏付けも必要ですし、相手に理解・納得をさせるだけのプレゼンテーション能力も必要です。男性は女性と比べて、このプレゼン能力の部分では優れているようですので、普段の仕事で培った、プレゼンテーション力・コミュニケーション力を駆使して、こちら側の具体的な提案を行って、妻との妥協点を探っていきます。

してはいけないのは、交渉の余地がないと言うような言動です。あなたが妻を諦めさせようとして、「話にならない・・・」とか「そんな言い分は通らない・・」「常識がない・・・」と言うようなことを言った場合、交渉は決裂して、調停~訴訟ということになりかねません。離婚の損害・ダメージ(精神的にも経済的にも)をできるだけ小さくする為には、なんとか協議離婚を成立させる努力をするべきです。また、何度も言う様ですが、離婚は交渉事です。駆け引きと言ってもいいでしょう。絶対に譲れないという部分があるならば、それは相手に伝える必要があります。お互いが提示した条件の堅いところ、柔らかいところを見極めていきます。頭に入れておくべきことは、離婚をしたいのは奥さんの方であると言うことです。あくまであなたが離婚に応じるか応じないかのカードを持っているのです。

◇ 離婚に応じる場合の交渉(相手に法的な責任があるケース)

つまり、奥さんが浮気等をした場合です。この場合には奥さんからの離婚請求は基本認められません。離婚原因を作った側(有責配偶者)から離婚をしたいと言い出しても裁判所はそんな身勝手は認めません(結婚生活が長期に渡って破綻している、未成熟の子どもがいない等の場合には認められるケースもあります)
ただし、これははっきりとした浮気の証拠がある場合です。奥さんが、「他に好きな人ができたから離婚して欲しい」と正直に打ち明けて離婚を求めるケースは稀です。おそらくは、性格の不一致等を理由に離婚の請求をしてきます。この場合の対応ですが、いくつかのパターンに分けられると思います。

① 奥さんの浮気に対して制裁を加えたい場合
あなたが浮気を疑っていて、そのことを許せないのであれば、証拠を確保する必要があります。決して「お前、他に男でもできたんじゃないのか?!」なんて言ってはいけません。そんなことを言えば、一気にガードが固くなり証拠の確保は困難を極めます。この場合には、浮気など全く頭にないという顔をして困惑したフリをしてください。そして、調査の時間を確保します。浮気調査の方法はいろいろありますが、相手の警戒心が緩くなればなるほど収集しやすくなります。写真や行動のメモ、メール、手紙など物的な証拠をしっかり確保することができれば、その相手の男性に対しての慰謝料請求も可能です。

② 浮気には目を瞑って離婚に応じる場合
腹立たしい気持ちはあるかとは思いますが、奥さんに対しての気持ちが冷めてしまっている場合には、できるだけ労力や費用をかけずに、有利な条件で離婚をしてしまうのも一つの方法です。奥さんはどうしても離婚をしたい状況ですので、条件的にはあなたの要求が非常に通りやすいと言えます。もし財産分与の請求をしてきた場合などは、ゆっくり時間をかけて交渉していけば、かなり譲歩をする可能性があります。もし、相手の態度が強行で調停も辞さないと言うような場合には、①の対応に切り替えます。

③ あなたから離婚の請求をしたい場合
この場合には、①と同じように浮気の証拠を確保することが大前提になります。もし浮気兆候を発見した場合には、有利に離婚をすると言う観点に立てば、問い詰めるなどの行為はしない方がいいでしょう。相手が素直に認める可能性は非常に低いですし、もし本当に気持ちが移っているのであれば、問い詰めたところで夫婦関係は元にはもどりません。結果、離婚という話に進んでいけば、当然奥さんも警戒してきますので、証拠の確保が難しくなります。決定的な証拠を持っていれば、慰謝料などの請求に訴訟を起こす必要がなくなる場合もあります。

④ その他の離婚原因がある場合
①~③は浮気(不貞行為)を前提としての記述ですが、例えば浪費やギャンブル、宗教活動やDV、家事・育児放棄などが原因であなたから離婚請求をした場合にも裏付け・証拠が必要です。ただし、こういった原因の場合にはどの程度までが許容されるべきものかと言うところが争点となることと、基本的に妻側は離婚をしたい訳ではないことから、協議による離婚は難しいケースが多いでしょう。

◇ 離婚に応じない場合の交渉(法的原因が無いケース)

法的原因がない、つまり性格の不一致や気持ちが離れてしまったと言うようなことが原因で離婚を請求された場合には、夫婦関係の修復は困難ですので、無理な婚姻の継続はお互いのためにならないと私は思います。
しかしながら、お子さんがいる場合などは夫婦の感情・意思だけで離婚をすることがいいとは言えない場合も当然あります。 子どもの事を考えて、離婚に応じない(婚姻生活を継続する)という判断をする場合はどう対応すべきでしょうか?
こういう場合の交渉は、感情が先に立ってしまい論理的な話し合いができない場合が多く見られます。話し合いができない、交渉の余地がないと思えば、妻は調停~訴訟という手続きに出る可能性もあります。両親が争うところを子どもに見せるのは、子の精神的な影響を考えても避けるべきでしょう。あなたが離婚に応じない基本的な理由が「子の福祉の為」と言うことを奥さんにしっかり説明し、例えば期限を設定して離婚を猶予するといった条件提示をすることで、奥さんとの話し合いを行う必要があります。どうすることが子どもにとって一番いいのか、生活環境や経済的環境などを話し合い、奥さんに理解を求める交渉をしていく必要があります。

◇ あなたから(夫から)離婚の請求をしたい場合

相手(奥さん)に不貞行為などの離婚原因がある場合に、あなたから離婚請求をしたいのであれば、前述の通りその証拠をしっかりと確保した上で交渉をすすめて行けばよいと思います。ではそれ以外のケースはどうでしょう。

あなた(夫)に不貞行為等の離婚原因がある場合

つまり、妻以外に好きな女性ができてしまった場合です。正直に責任を取るのであれば、奥さんにそれ相応の慰謝料・財産分与等を行って離婚をするのが一番すっきりします(経済的にはかなりの損失ですが)。
では、その事実を伏せたまま離婚の請求をする場合はどうでしょう。妻がその女性の存在に全く気付いていないのであれば、財産分与などできるだけ相手の条件に応じる姿勢を見せて、素早く離婚を成立させてしまうことです。この場合の離婚交渉は相手(奥さん)にアドバンテージがあります。そこのところをしっかり頭に入れて、譲歩すべきところは譲歩して離婚交渉を行う必要があります。
もし、奥さんが浮気を疑っているような場合には、離婚の成立まではその女性に会わないくらいの慎重さが必要でしょう。もし、問い詰められても絶対に口を割ってはいけません。中途半端な証拠(一緒の所を誰かに見られたなど)などは、知らない・事実ではないとはっきり主張する必要があります。また、奥さんが全く疑っていないような顔をしていても警戒を怠ってはいけません。そもそも夫からいきなり離婚を切り出された場合には、どんな説明をしようとも大半は「女性」の存在を疑います。あなたの奥さんも例外ではありません。気付かないフリをして興信所に調査依頼をしているかもしれないのです。

性格の不一致などで離婚したい場合

例えば、一緒に生活していることで精神的に負担となり体調を崩してしまった・・・ などと言うような明確な理由がない限り、相手が離婚を認めなければ簡単に離婚はできないと思った方がよいでしょう。性格の不一致は、実際の離婚理由としては最もポピュラーですが、これが理由で離婚が認められるケースは女性が請求した場合が大半です。つまり、家計を支えている夫側から、性格の不一致を理由に離婚請求をする場合には、別れた妻や子に十分な経済的な支援を行うことができる状況でなければ、夫の一方的かつ身勝手な行動と捉えられかねません。この様なケースでは、まず経済的・金銭的な準備が必要になってきます。

 

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