◇ 調停離婚とは
離婚をしたいと考えても、相手方にまったくその意思がない場合や、離婚そのものについての合意ができていても子どもの親権の問題や、養育費、財産分与、慰謝料などの金額で合意ができず、協議離婚が成立しない場合には、家庭裁判所に調停の申立をすることになります。裁判によって離婚を求める(離婚訴訟)方法がありますが、訴訟を起こす場合も必ず先に調停を行わなければなりません(これを調停前置主義といいます)。もし、調停を経ることなく離婚訴訟を提起しても、まず調停に移されることになります。
● 調停離婚の特徴
・裁判所が関与するが、基本は夫婦の合意による離婚であり、離婚理由の制約はない。
・訴訟に比べ手続きが簡単であり、本人だけでも行うことができる。費用も安い
・指定された日に家庭裁判所に出頭する
・家庭裁判所の調停委員会という第三者が関与するため、著しく不当・不公平な離婚になることがない
・当該の離婚全般について話会うことができる(子どもや財産の問題も合わせて解決できる)
・調停で決定したことは、強制力のある調停調書に記載されるので、安心確実である
・あくまでも話し合いであるので、相手に応ずる気がなければ調停離婚は成立しない
◇ 離婚調停の申立方法
管轄の家庭裁判所に、調停の申立書の他必要書類を提出して申立を行います。
● 申立人
夫または妻
● 申立先
相手方の住所地の家庭裁判所又は、当事者が合意で定める家庭裁判所
● 申立に必要な書類
・調停の申立書
・夫婦の戸籍謄本
・年金分割の為の情報通知書(年金分割割合についての申立が含まれる場合)
● 必要な費用
・収入印紙 1200円分
・連絡用の郵便切手代
※ 家庭裁判所 夫婦関係調整調停(離婚)
※ 離婚調停の申立書 記入例
●その他注意点
離婚に際して財産分与を求める場合には、分与を求める財産に関する資料
(不動産の登記事項証明書、預貯金の通帳など)を準備しておく必要があります。
◇ 離婚調停の流れ
① 調停の申立があると、家庭裁判所で調停委員(裁判官と調停委員2名)が選任されます。
② 調停の期日について、家庭裁判所の書記官から希望する日時の問合せがあり、その後第1回調停期日の日時・場所の記載された「呼出状」が相手方に送付されます。
③ 第1回調停期日では
裁判官からの手続きの概要説明のあと、調停員から申立人に対して、離婚の理由や離婚に際しての希望・条件、離婚協議が合意できない問題点などについての聞き取りがあります。
※事前の準備として、この聞き取りで調停委員にしっかりと状況把握をしてもらえるように、離婚を決意した経緯・原因、離婚に際しての希望その他の事情などをまとめてメモを用意しておくと良いでしょう。
この時は相手方は待合室で待機しているので、話を聞かれることはありません。その後、相手方と交替して相手方が事情聴取を受けます。その後、再度申立人が呼ばれ、相手方の主張などについて説明があり、問題について調停員のアドバイスを受けながら話合いを行います。第1回の期日で話し合いがつかない場合は、後日改めて話し合います。1回の期日は約1~2時間程度で行われます。
④ 第2回目以降の調停期日
調停委員は、双方のやり取りの中から、問題点を整理して第三者の中立な立場から意見を述べてくれます。話合いを進めて、合意する可能性があれば、この様な調停を1ヶ月~1ヶ月半のペースで行われ、状況によって半年程度続けられます。しかし、当事者間でまったく合意の見込みがない場合は、短期間で調停は打ち切られます。
⑤ 離婚することや、その条件について、調停の話し合いの中で合意できた場合は、調停委員会のチェックを経てその内容が「調停調書」という形にまとめられます。調停離婚が成立した場合は、「確定判決または確定した審判と同一の効力」が生じますので、慰謝料や財産分与・養育費の支払いなどを命じる調停条項が合意されたにも関わらず、相手がその義務を怠った場合には、確定判決と同様に強制執行の手続きを取ることができます。
⑥ 離婚調停が成立した時点で、離婚(調停離婚)が成立したことになりますが、事後の手続きとして離婚届を役場に提出しなければなりません。(調停成立後10日以内に、調停調書の謄本を添付して提出します)
※注意 離婚調停において、「協議離婚をすること」が合意される場合もあります。この場合は、調停が成立しても離婚は成立していません。改めて離婚届を提出して初めて離婚成立となります。
◇ 調停不成立・調停取下げ
● 調停不成立
調停委員を交えた話し合いを数回にわたって行っても、当事者間で合意できない場合や、相手方が調停に応じず合意の見込みがない場合は調停は不成立となり終了します。不成立後の手続きには2通りがあります。
① さらに離婚を求めて、家庭裁判所に離婚訴訟を提起する
② 調停に代わる審判
②の審判は、調停が不成立になった場合でも、家庭裁判所が調停委員会の意見を聞いた上で、当事者双方の衡平を考慮し、一切の事情を勘案し、職権によって当事者双方の申立の趣旨に反しない限度において、離婚の審判をするというものです。この審判では、金銭の支払い等を命じることもできるとされています。
審判は、たとえば調停の過程で、ある程度当事者の納得が得られ、社会的にも妥当であると思われる調停案で大筋の合意ができていたにも関わらず、当事者の一方が、離婚合意を拒んでいるといったような場合に、家庭裁判所が調停案による離婚が相当を判断し審判をくだします。
ただし、この審判に対して不服がある場合は、審判の日から2週間以内に当事者や利害関係人から異議の申立ができます。この異議申立があると、その意義に正当な理由があるかないかに関わらず効力を失ってしまいます。
● 調停の取下げ
申立人は、調停手続きが終了するまでは、いつでも申立を取り上げることができます。取下げに相手方の同意は不要です。取下げによって調停は終了します。